今日も産まれる気配はなくて、時間を忘れて自分の試作ホームページを作ってました。
午前中電話をくれた友達も、まさか今日の夕方産まれるなんて夢にも思わなかったんじゃないかしら。
あたしだってこの日の夕飯を分娩台で食べるなんて思ってもみなかったし!
12:45
時間を忘れてHPを作っていたら気が付けば13時前、
一段落したからお昼でも食べようかな~と思って台所へ行った。
鶏肉が悪くなりそうだな~、ムネ肉だし唐揚にでもすっかな。
タレにつけて我慢してたトイレに行った。
『ふ~っ』
・・・・・・。 あ~れ~?止まんないな~って・・・
破水じゃん!?
今回は 破水から始まりそうだとは思ってたけど、まさか本当に破水するなんて~!
私 『お姉ちゃ~ん破水した~』
そう、12月の切迫早産で退院した日からお姉ちゃんが手伝いに来てくれていたのだった。
姉 「マジで!?」
コタツでうたた寝していたお姉ちゃんが飛び起きた。
私 『ん~と・・・・・、とりあえずお昼食べよっか』
姉 「・・・。」
そう、妊婦って以外に冷静である。いや、”冷静でいたかった” だけかも。
実は内心すっかり舞い上がっていた。
だって失敗するはずもない唐揚が大失敗したから。
旦那に連絡してから病院へ電話。
その間も”何か”はちょろちょろ出てきてるから心配になってきた。
病院 「じゃ、14時から診察なので、14時になったら来てくださいね~」
私 『は~い・・・。』 な~んだ、拍子抜けしちゃった。
14:00
『今日産まれるかも』
ちょうどメールが来た義理のお姉さんに返信をしながら旦那と病院へ。
『全然痛くないのよね~』と待合で待っていたら、その”何か”が結構出てきて座れなくなってきた。
内心ドキドキだったけど冷静を装っていた。
先生 「じゃ、下履きを取って診察台に上ってくださいね」
私 『上がれませ~ん』
だってパンツ脱いだら大変なことになるんですもん。
でも、上がりましたとも。パンツ履いたまま。
先生 「上部破水ですね~。このまま入院してくださ~い」
そしてそのまま陣痛室に通された。
奥には先客が居た・・・。
15:00
カーテン越しの隣の夫婦はボソボソと楽しげに話をしてた。
お隣さん、 随分余裕あるのに陣痛室?そう思った。
あたしはというと手術着みたいなのに着替えさせられた。痛みはほんの少しだけ。
隣 「隣も入ったね。今日満月かな~、満月って赤ちゃんが産まれやすいんだって」
私 『今日は満月じゃないんですよ~』 と喉まで出かかった。
ここで話しにまじったら変な人かと思われるかと思って我慢したが、
この人とは波長が合いそうだという野生のカンの様なものが働くと、つい話しかけてしまう。
でもあたしはれっきとした人見知だ、と言ってもあまり信用されない。あたりまえか・・・。
しかも満月かはあたしも気になっていて調べてたのだ。
その後の入院中、このお隣さんと仲良しになったのは言うまでもない。
そして少ししてからやっと旦那が入ってきた。
15:30
看 「じゃ、病室に案内しますね~」
って、ここにずっといれないのー?ナースのそばに!
そうだった、1人目、丸々2日は苦しんだんだった。
2日間も2床しかない陣痛室を陣取るわけにはいかなかった。
でもナゼお隣さんはいいのだろう?答えは後でわかることになる。
陣痛の痛みは生理痛より少し痛いくらいになっていたので不安が増してった。
ナースのそばにいられれば少しは安心するのになぁ・・・。
あたし、耐えられるかしら・・・。不安 不安 不安・・・。
病室は2人部屋、カーテンがひかれていた。
隣は今朝産んだ人らしかった。
「2時間の安産だったのよ」 と話し声が聞こえてきた。
『マジで?いいよねそんなに早く産んで!あたしゃこれから苦しむんだよ』
とあたしはすっかりひねくれていた。
でも 陣痛で痛い!
とは言わないように心に決めていた。
まさか自分も2時間で産むなんてこの時は夢にも思わなかったのである。
動けば出産が早くなるだろうと、陣痛の合間はとにかく動いた。
入院準備の片付けをしたり、ウロウロしたり。
でも、我慢できなくなって通りかかった看護婦さんに助けを求めた。
『陣痛室に行ってもいいですか~っ!』 ←直訳 『助けてくださ~い!!』
16:00
『またきた!』 そう言いながら陣痛に耐えていた。
前回も陣痛に苦しんだのはあたしだけじゃなかったんだった。
丸々1日、24時間旦那様はあたしの腰を親指で押し続けて下さったのである。
おかげで両親指はしばらくの間曲がったままだったらしい。
『俺の親指さ~』と笑って話してくれたのを覚えている。
だから今回はさすってもらうことにした。
『またきた!』 ゴシゴシ
『もっと下!』
『ゆすんないで!』 産婦はわがままである。
『ありがとう』 痛いのが終わると必ず言う一応の礼儀。
もし、あたしが誰かのお産に立ち会ってって言われたら断るかも。
そう思うほど大変なのだ。
すでに3分間隔。
今、子宮口は何センチ開いてるんだろう?5センチくらい?いや、期待はしないでおこう。
また2日も苦しむかもしれないし!
そう思って気晴らしにMDを聞き始めたが何がかかっていたか覚えてない。
でも隣の話し声だけは覚えている。
あぁ、あたしもう駄目かも~。
2日も耐えられない・・・。
不安だけがどんどん増していった。
16:30
看 「診察しましょうね~、分娩台に移動できますか?」
助かった!なぜかそう思った。
看 「あら、7センチですね。お産にしましょう」
・・・。へ!?
一気に肩の力が抜けた。 てか拍子抜け。
私 『マジで!? 早っ!』
陣痛の合間は冷静である。
2人目は早いというけど、ホント早かった。
テキパキとお産の準備が始まる中、陣痛は休みなくやってくる。痛さが増すのも早かった!
もう呼吸法は 『フ~ッフ~ッ』 から 『フォーッ!フォーッ!』 に。
痛くて叫ぶ人も多いという。
『うぅ~・・・。』 声を出して痛がるのはやめようと思っていたがつい出てしまう。
そして だんだん痛くて声が震えてきた。寒いときのように。

17:30
助産婦 「はい頑張っていきんで~」
私 『う゛~~~っ!』
助産婦 「目はオナカを見て~」
そうだ、出産は目を開けてするもんだった!
そうしないと産後顔の毛細血管が切れたりして顔が真っ赤になるらしい。
だんだん股の間に何かが挟まってくるのがわかる。
もう少し、もう少しだから頑張れあたし!
これが終わったらもう終わりだから、頑張っていきめ~!!
何回いきんだだろう。
助産婦 「はい、ハッハッ(呼吸法)!」 これを言われたら終わりなはず!
私 『ハッハッハッ』 ・・・!!
ズルズルッと物体が出てくる。
その後のなんとも言えない感じと達成感!
『ほぎゃ~』 あ~・・・。やった~・・・。終わった・・・。
このときはそう思ったが、実はここから始まるんですよね、育児が・・・

17:45
助産婦 「おめでとうございます、3390グラムの元気な男の子ですよ~」
私 『ありがとうございます~!』
デカイ!!オナカもでかくなるはずだ。
一度抱かせてもらったが、再び処置のため連れて行かれた。
生まれたばかりの我が子は、お兄ちゃんにそっくりだった。
助産婦 「ちょっと裂けちゃいましたけど、伸びが良かったので切らなかったですよ」
私 『・・・。 の、伸びって・・・。』
経産婦は”何か”のびるらしい。
助産婦 「避けたとこは縫いますね~」
ここでやっと先生登場~。
さっき裏のほうで「早いねぇ~」って言ってたのをあたしは聞き逃さなかった。
私 『先生、ありがとうございます!』
でも先生は実はここまでは見てるだけ。
今までは助産婦の仕事なのだ。 先生は切ったり縫ったりするだけ。たぶん。
先生 「じゃ、縫いますね」 チクッ
私 『ん?麻酔?もう縫ってるの?・・・。 あれ?な、なんか・・・。おかしい・・・。 耳鳴り?焦点もあわない・・・。』
耳がグワングワンいっていた。
助産婦 「大丈夫ですか!聞こえますか!?」
「しっかりして下さい!酸素して!」
周りがあわただしくなった。
何やら大変なことになってるらしい?
助産婦 「深呼吸してくださ~い!聞こえますか~?」
私 『は~・・い・・』 血圧を測られる・・・。何度も。
もう一台ある分娩台で誰かがいきんでいる声が聞こえてきた。
今回の出産は切迫流産、切迫早産、と色々あったが最後まですんなりいかないらしい。
ボーっとしている間もお兄ちゃんは赤ちゃんに会ったかなとか、
入院中、旦那の実家でうまくやっていけるかなとか、考えることはできていた。
しばらくすると意識がはっきりしてきた。
『貧血かなぁ』 詳細は今も不明である。
その後入ってきた旦那が真っ青な顔色のあたしを見てビックリしたらしい。
旦那様 「大丈夫か?お疲れ様!」
パパもね。
助産婦 「2時間ほどここで休んでから病室に行きますね」
看護婦さんにそう言われて旦那と分娩室で話をしていた。
分娩台はいつの間にかベットみたいに変形していた。
『早かったよね~。良かった早く終わって!』
な~んて話をしていたら、ボソボソっと隣の分娩台から声が聞こえてきた。
『ん!?』 あの声は・・・!
まぎれもない、さっきの満月のお隣さん!!
いつの間に分娩室に!?
陣痛あったの?
え~!?
後日聞いてみると、あたしのいきんだりする声を聞いていたら、
陣痛誘発剤の点滴が急に効いてきて、あれよあれよと言う前に出産になっちゃったらしい。
そう、先生の「早いねぇ~」と言ったのはあたしにじゃなく、お隣さんにだったのだ!
2時間後、助産婦さんが来て、回復の様子を見に来た。
どうやら出血量が多いらしく、もう1時間様子を見ることになった。
お兄ちゃんが旦那に連れられて入ってきた。

「ママ~大丈夫?お疲れ様!ボク赤ちゃん見たよ!」
とかなり興奮気味。
そして、飲み物をくれたり、汗を拭いてくれたり(垂れてないけど)
甲斐甲斐しくあたしに看護してくれた。
あ~、優しい子だなぁ。涙が出そう。
お隣さんはすでに病室へ行った模様。
助産婦 「夕食取れますか?」
分娩台の上で食事をすることになった。
今日の夕食はサーモンとホタテのクリーム煮だ。
そう、ここの食事はホテル並みだった。
前入院していたときも毎日素晴らしい食事をいただいていた。
しかも3時のオヤツ付き!おいしいが半分しか食べられなかった。
1時間後、また助産婦さんがやってきた。
「う~ん・・・。」そういうとオナカを押し始めた。
「ブリュブリュッ」 また何かを産んでしまった。
結構な量の血(?)の塊だ。
子宮収縮剤を点滴することとなり、後陣痛(経産婦が特に痛むらしい)が辛くなってきた。
『パパ~。もう帰っていいよ~。』 9時を過ぎていた。
ドラマ、”救命救急”はちゃんとお姉ちゃんにビデオの録画を頼んでおいた。
お兄ちゃんも眠いだろうし、明日は旦那の実家に行かなきゃならないしね、
しばらくの間お別れだねお兄ちゃん・・・。
お兄ちゃんはあたしの口と目にキスをして帰って行った。
退院したら家族4人楽しく仲良く暮らそう!
MDを聞きながら回復を待ち、病室に戻ったのは12時過ぎのことだった。